
Stripeの代替:KYC不要のクレジットカード決済ゲートウェイは?
KYC不要で使えるクレジットカード決済ゲートウェイを、Stripeの代替としてご紹介。 USDTで簡単に出金できるほか、不正防止や法令遵守に関するポイントも解説します。
2025-04-150分で読むTips
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オンラインビジネスを運営する際、クレジットカード決済を導入することは、売上を伸ばす最も簡単かつ効果的な方法の一つです。2025年現在では、非クレジットカード決済手段の人気が高まりつつあります。たとえばアジアでは、AliPayやWeChat PayのようなQRコードベースの決済が事実上の標準となっています。世界的にも、より多くの大企業が暗号通貨での支払いを受け入れ始めています。しかし、依然としてクレジットカード決済はオンライン決済における圧倒的メジャーであり、クレジットカード決済が出来ないECサイトの売上は極めて制限されたものとなることでしょう。
しかし、販売者としてクレジットカード決済を導入するには、さまざまな制約やビジネス上のリスクが伴います。
Stripeのような主要な決済プロバイダーは、厳格なKYC(顧客確認)およびKYB(事業者確認)の手続きを要求します。これらはマネーロンダリング防止や不正対策のために必要な措置であり、販売者の身元を確認することで購入者に安心感を与えます。一方で、KYC/KYBのために個人情報を提出することは、プライバシーを重視する個人や信用力のないスタートアップにとって大きなハードルになり得ます。
それならば、KYBやKYCを必要とせず、販売者のプライバシーを保ったままクレジットカード決済を受け入れられる決済プロバイダーがあれば理想的ではないでしょうか?
この記事では、販売者のプライバシー保護に焦点を当てた複数の決済ゲートウェイを紹介します。
免責事項: 本記事で紹介しているのは、KYBやKYCを必要としない決済ゲートウェイです。しかし、クレジットカード決済を受け入れる事業者は、発行会社や決済が行われる国の法律に従って取引を処理し、適切な税金を支払う法的義務があります。これらのプロバイダーを利用する場合でも、チャージバックなどのリスクは回避できません。
WATA
https://en.wata.pro/
WATAは、SakhaPayments LLCによって提供されている決済ゲートウェイです。
このサービスを利用開始するにあたって、KYBやKYCは不要であり、必要なのはウェブサイトが規約に準拠しているかどうかの事前審査のみです。(ほとんどの決済ゲートウェイと同様に、ハイリスク業種やアダルトサイトには対応していません。)
WATAで対応している支払い方法
- WATAは、MasterCard、VISA、MIRなどの支払いに対応しています。
WATAを利用するメリット
- WATAの手数料は、StripeやSquareといった一般的なゲートウェイと同等で、合計約10〜12%です。
- WATA経由で発生した売上は、出金手数料なしでUSDTにて引き出し可能です(ガス代のみ差し引かれます)。
- WATAのAPIは非常に強力で情報が豊富です。クレジットカード決済が失敗した場合でも、APIを通じて正確な理由を取得できるため、購入者に別の行動を促すことでコンバージョン率の低下を最小限に抑えられます。
Pay4Bit
https://pay4bit.net
Pay4Bitは、Fintechnet Solutionsによって提供されている決済ゲートウェイです。
利用開始にあたり、KYCやKYBは不要で、必要なのはウェブサイトがPay4Bitの規約およびAML(マネーロンダリング防止)要件を満たしているかどうかの事前審査のみです。審査は通常、申請から数分〜数時間以内に完了し、すぐに決済の受け入れが可能になります。
Pay4Bitで対応している支払い方法
- 複数のクレジットカードに対応:MasterCard、VISA、AMEX、Diners Card、UnionPay、JCB
- ワンクリック決済に対応:Link、Google Pay、Apple Payと統合
- 暗号通貨決済に対応:Bitcoin、Tether(USDT)、Tron、Litecoin、Ripple、Solana、Polkadot
- 銀行振込に対応:アメリカ、EU、イギリス、トルコ国内での送金が可能
Pay4Bitを利用するメリット
- 販売者はAPIを利用して自社サイト上にカスタムの決済フォームを構築したり、Pay4Bitプラットフォーム上で支払いを受け付けるための支払いURLを発行したりできます
- Webhookを使用して、支払い完了通知を受け取ることができます
- 収益はSEPA経由の銀行振込、またはUSDTで受け取ることが可能です
- ソフトウェアは頻繁にアップデートされ、新機能が日々追加されています
Pay4Bitの利用コスト
まず、Pay4Bitの利用に初期費用や月額料金は一切かかりません。
収益モデルは主に2つの要素から成り立っています:
- 各売上につき最大€1.5の小額手数料
- 5%〜10%の出金手数料
なお、売上手数料は購入者側が負担するため、販売者にはコストがかかりません。
ただし、返金が発生した場合には、その手数料は販売者が負担する必要があります。
Pay4Bitの使用レビュー
実際に弊社もPay4Bitを利用して支払いを受け付けています。
サポートチームは非常に迅速で、通常は数分〜数時間以内に対応してくれます。
ソフトウェアも継続的に進化しており、利便性がどんどん向上しています。
たとえば導入当初は、返金手続きはサポート経由で手動対応が必要でしたが、ほどなくして管理画面から自分で返金処理が可能になり、現在ではAPI経由での自動処理にも対応しています。
一時期、詐欺カードユーザーによる被害もありましたが、現在ではリスクベースの不正対策システムが導入されており、不正スクリーニングの問題は大幅に減少しました。
匿名性の高い決済ゲートウェイを使用する際の注意点
不正対策
WATAやPay4Bitのような決済ゲートウェイを使うことで、販売者は過度なビジネス情報を顧客に開示することなくクレジットカード決済を受け付けることが可能になります。
その一方で、これらのゲートウェイは大手決済システムと比べると不正対策機能が未熟である可能性があるため、販売者自身が十分な自己防衛措置を取る必要があります。たとえば:
- 3Dセキュア(3DS)対応カードでの認証を必須にする
- Scamalytics のような外部APIを利用して、VPNやTor、iCloud Private Relay経由の匿名アクセスをブロックする
- 購入前に購入者の情報を収集し、SumSubのようなKYC SaaSを用いてカード所有者と利用者が一致しているかを確認する
高リスクまたは違法取引を試みるユーザーは、しばしばVPNやTorなどの匿名化ツールを使用して自らの身元を隠します。
そのため、Scamalyticsのようなサービスを活用し、顧客のリスクレベルを適切に評価することが重要です。
Scamalyticsでは、顧客の不正リスクを100点満点でスコア化してくれます。
また、IPアドレスが一般的なコンピューターではなくVPSやサーバー由来であるかどうか、あるいはVPNやTorの出口ノードであるかどうかも判別する機能があります。
VPN型AdBlockツールを常用している顧客に対しては誤検知(偽陽性)が発生するリスクもありますが、こういったサービスは高リスクな顧客との取引を回避するための第一防衛線となります。
顧客への信頼提供
たとえKYCやKYBを必要としない決済ゲートウェイを使用していても、ビジネスの信頼性を顧客に認識してもらうためには、代替手段による信頼獲得が必要です。たとえば:
- 販売者情報の開示が法律で求められる場合があります。たとえばイギリスでは、Consumer Contracts (Information, Cancellation and Additional Charges) Regulations 2013 により、販売者の住所や連絡先などの情報を開示することが義務付けられています。これは多くの国で共通です。
- 購入時に、販売者および決済ゲートウェイが収集する顧客情報の種類を明確に記載する。なお、クレジットカード番号やCVCの保存はもはや許容されないビジネス慣行です。
- 返金ポリシーを明確に表示すること。
KYC不要で利用できる決済ゲートウェイは非常に便利で柔軟性がありますが、それを使うには依然として一定の責任が伴うことを忘れてはなりません。